価値やニーズの多様化、流動化が著しい現代のビジネス環境において、経験や感覚を基にした市場戦略はほとんど通用しません。変化・流動し続ける顧客ニーズをリアルタイムで把握し、迅速に顧客ニーズへ応えることこそ、業績の安定や成長へとつながります。
顧客ニーズへ的確に応えるためには、マーケティングリサーチが不可欠。エビデンスに基づいたデータを取得し、データに基づいた的確な戦略を構築・実践することが現代ビジネス社会には求められます。
定量調査や定性調査、データマイニング等のマーケティングリサーチ手法を用いることで、いわゆる顧客インサイトの発見につなげることが可能となります。
顧客インサイトとは、顧客自身も自覚していないような潜在的欲求やニーズ、本音などのこと。顧客インサイトを刺激する商品・サービスの提案は大変有効な市場戦略であり、そのための基礎データを得る主な手法がマーケティングリサーチになります。
顧客の潜在的な期待に応え続ける戦略は、当然ながら顧客ロイヤルティの向上につながります。セグメント化された各顧客層に同様のアプローチを続ければ、やがて市場における自社の信頼へとつながることでしょう。ひいては自社のブランディング構築にも貢献し、市場における安定した地位の長期的な維持にも貢献します。
マーケティングリサーチで得られたデータを用いることで、企業の意思決定の確実性を高めることが可能となります。
マーケティングリサーチでは定量的・定性的データ等を豊富に取得しますが、いずれのデータも科学的・客観的根拠に基づいて取得したものです。経験や直感、感覚で構成された材料ではありません。
科学的・客観的なデータであればこそ、意思決定において、経営者や現場責任者等の恣意性を排除することが可能です。結果として、意思決定の確実性が高まることとなります。
意思決定の確実性が高まるということは、言い換えれば市場での成功率が高まるということ。市場での成功率が高まるということは、逆に言えば市場での失敗リスクが低減するということでもあります。この点において、マーケティングリサーチは誤った判断を防ぐための重要な防波堤の役割も果たしている、と言えるでしょう。
マーケティングリサーチは、マーケティングROI(投資収益率)の向上においても重要な役割を果たします。
マーケティングリサーチの主な目的の1つは顧客ニーズの把握ですが、顧客ニーズの正確な把握ができればターゲッティングの確度が上がり、結果として無駄なコストの削減が期待できます。
また、マーケティングリサーチによる顧客インサイトの獲得を通じてエンゲージメント率の向上も期待できるでしょう。
さらに、マーケティングリサーチにより、過去の広告やキャンペーン等の効果を検証することもできるため、無駄な営業活動の抑制の抑制と効果的なアクションを抽出できます。
ほかにも、商品開発の精度を上げられること、市場トレンドを把握できること、適切なチャネル選択が可能になることなども通じ、マーケティングROIの向上に貢献することでしょう。
市場動向は常に、かつスピーディに変化を続けているため、企業が市場で勝ち残るためには、このスピードに置いていかれないよう市場変化に対して迅速な反応をしなければなりません。この迅速な反応を可能とする手法の1つがマーケティングリサーチとなります。
オンラインを通じた各種のマーケティングリサーチは、顧客の動きの変化をリアルタイムで把握することを可能とします。ソーシャルメディアのモニタリングやユーザー行動のリアルタイム分析などを通じ、スピード感のある対応を継続すれば、常に変化を続ける顧客の心を掴み続けることができるでしょう。顧客インサイトや市場トレンドなどの早期把握も、競合に先駆けたスピード感ある対応へとつながります。
また、マーケティングリサーチで競合企業の戦略(新商品の投入や価格の見直しなど)を素早く察知することで、競合企業の話題性に埋もれないよう迅速な対応につなげることもできます。
市場で成功するためには、顧客ニーズに応じた商品開発や適切な価格設定なども重要ですが、同様にスピード感ある対応も大変重要。マーケティングリサーチがあればこそ、顧客の購買意欲をリアルタイムで刺激する迅速な行動が実現します。
新規事業の立ち上げや新商品の市場投入に際し、マーケティングリサーチは失敗リスクを抑える有効な手段の1つとなります。マーケティングリサーチが失敗リスクを抑える主な理由として、以下3点を見てみましょう。
マーケティングリサーチにより、顧客ニーズを正しく把握することができます。逆に言えば、顧客ニーズに合わないものを排除することが可能となるため、ニーズに合わない商品を市場へ提供して失敗するリスクを低減できることになります。
マーケティングリサーチを行うことで、対象となる市場の規模や販売機会などを適切に把握することが可能となります。市場の過大評価や過小評価を避けられるため、対象市場における資源配分の失敗リスクを低減させられるでしょう。
マーケティングリサーチを行うことにより、高すぎる価格で顧客からの関心を失ったり、安すぎる価格で利益を圧迫したりなど、価格戦略でのリスクを低減させることができます。
価格戦略でよく用いられるマーケティングリサーチ手法がA/Bテスト。たとえば新たなスキンケア商品を売り出す企業において、異なる価格のA/Bテストを行い、どの価格がもっとも購買意欲に結びつくかをリサーチします。
一昔前とは異なり、いかなる市場でも顧客ニーズは流動的で、かつ多様性があります。去年よく購入された商品が、今年もよく購入されるとは限らない時代となりました。この市場変化に対応できない企業は、遅かれ早かれ事業規模の縮小を余儀なくされることでしょう。
現代の難しい市場において安定的な売上を維持し、さらに企業業績を成長させていくためには、マーケティングリサーチによる客観的データに基づいた迅速な意思決定が不可欠です。改めてマーケティングリサーチの役割や重要性を認識し、確度の高い市場戦略の実践を目指したいものです。