ジャーニーマップ調査とは、見込み客がブランドを認知し、情報収集し、比較検討し、購買し、利用体験を共有するまでの一連の行動・思考・感情を時系列で可視化し、ボトルネックやインサイトを抽出するリサーチ手法を指します。広告接触や店頭体験といったタッチポイント単位の満足度だけでなく、「なぜそこで感情が動いたのか」「次の行動を阻む摩擦は何か」を深掘りして、CX(カスタマーエクスペリエンス)向上、顧客獲得コスト最適化、ロイヤルティ育成などの戦略立案に活かすことが主目的です。
オンライン・オフラインが複雑に交錯し、顧客行動が非直線化した現在、顧客接点を個別最適するだけでは体験全体の一貫性が担保できません。ジャーニーマップ調査によって①タッチポイント間の断絶を発見し、シームレスな体験設計ができる、②感情曲線の急落ポイントを特定し、機会損失や離脱を抑制できる、③ポジティブ体験が口コミやリピートに波及する因果を定量的に把握し、投資効果を検証できる、というメリットが得られます。
ステージ別に必要な情報・チャネル利用状況・満足度を大規模アンケートで数値化し、顧客セグメントや行動パターン別のスコアを算出します。例えば「認知→興味→検討→購入→利用→推奨」の各段階でNPS、タッチポイント別CS、LTV寄与度を測定し、重回帰分析でステージ間の移行確率をモデル化します。
生活者10〜15名程度に対して、エスノグラフィ観察・デプスインタビュー・ダイアリー調査を組み合わせ、接触前後の生活文脈や感情変化を時系列で収集します。カスタマージャーニーシナリオの穴埋めワークやエモーショナルドローイングを用いると、定量では見えない「暗黙の期待」「比較軸の変遷」「記憶に残った瞬間」を抽出できます。
ステージ別に「行動(What)」「動機(Why)」「感情(How Feel)」「タッチポイント(Where)」を網羅する4×n設問構成が基本です。Likert尺度で満足度を聞いた直後にオープンエンドで理由を聴取し、解釈ギャップを防ぎます。さらに、カードソートで重要タッチポイントを順位づけし、コンジョイントで改善要素の効用値を算出すると、優先施策を定量裏付けできます。
コア顧客・ライト顧客・離脱経験者の三層を均等比率で抽出し、年齢・性別・エリア・購入頻度で層化します。離脱層を含めることで「理想」と「現実」の差分が鮮明になり、見落とされがちな改善機会を可視化できます。インタビューではペルソナに近いモデレーターを起用し、心理的安全性を担保した上でネガティブ体験を深掘りします。
オンラインアンケートは回答直後にサンキューページで「次回インタビュー協力可否」を募り、定量→定性のシームレスなデータ連携を実現。ダイアリー調査ではスマホアプリを使い、位置情報・写真・音声メモをリアルタイムで収集し、感情変化をヒートマップ化します。二次データとしてWebログ・購買履歴・チャット履歴を統合し、行動と発話の突合を行います。
●エモーショナルカーブ:ステージ×感情強度を折れ線で描き、落差>15ptの谷を「痛点」と定義
●マルコフ連鎖:タッチポイント遷移確率を算出し、離脱率が高いノードを特定
●テキストマイニング:谷ポイントの自由回答をネガポジ分析し、感情語・原因語・文脈語の共起ネットワークを可視化
●パーセプションギャップ:企業想定CXと顧客体験スコアの差をレーダーチャートで表示
Plan:痛点KPI(離脱率・不満スコア)の数値目標を設定
Do:改善施策を実装しABテスト
Check:翌月同条件でミニサーベイを実施し、感情カーブと行動遷移を再計測
Act:効果が高い施策を全タッチポイントへ横展開し、次の課題を優先度順に着手。半年ごとにフルスケールでジャーニーマップ調査を再実施し、中長期CXの健全度をモニタリングします。
ジャーニーマップ調査は、顧客がブランドと出会ってからファンになるまでの「体験の旅」を可視化し、感情と行動を裏付けるデータで改善サイクルを回す経営ツールです。オンライン施策・店頭オペレーション・コールセンター対応など分断しがちな部門連携を促し、組織全体で顧客視点の価値創造に取り組む土壌を醸成します。感情谷を埋め、感情峰を増幅する施策を継続的に実装することで、LTV向上、口コミ拡散、ブランド愛着の深耕が期待でき、長期的な競争優位を実現します。